// 赤い糸

 まるで赤い糸が、私の首に絡んでいるみたいなの。 その赤い糸は、どうやってもほどけないの。 ほどこうとすると、逆に首がどんどん絞まっていくの。 苦しくてたまらないから、私は諦めるの。 でもむずがゆくて、またほどこうとするの。 それを何度も何度も繰り返すの。
そんなあまりにも理不尽な罰、されたことある?
 と、私は彼に問いた。 彼は困ったように、けれど真剣な顔で私を見つめる。 本当に真剣に考えているのがわかった。 馬鹿みたいに真っ直ぐな瞳がきらきら光ってる。 私の方が思わずそのプレッシャーに負けて、俯いて笑う。 冗句だよ、冗句。 おどけたようにそう言った。 彼はそれで安心したらしい。 一気に気が抜けた雰囲気が伝わった。 私もそれに安心する。
赤い糸は私の首を絞めるものだけど 同時に私を幸せに導いてくれるものでもあるから。
 憎んだりはしないよ、と微笑む。 少し強張ったかもしれない。 それでも彼に与えたものは充分だ。 それなら良かったと彼は言った。 うん、本当に。 そんなものがなければよかった、と私は思う。 決して満たされることのない希望。 私はまだ笑っていた。 酷く滑稽に、腹を抱えて。
やあね、本気にしちゃって。 あるわけないじゃない。 そういって、私は顔を上げた。
 そして私の瞳にそっと、彼の首に巻かれた赤い糸が映る。

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