形状記憶少女

// (六・結)

「ただの噂?」
「そう、毎年どこからか、寮が潰れるという噂が流れるの」
「今回は」
「うん、本当に危なかったね、今年だけ。でも、危なくなくてもいつになっても流れるの。まあ、都市伝説みたいなものじゃないかなあ」
「都市伝説?」
「うん、寮生たちに、本当に今は掛けがえがない時間なんだ、って思わせるようになんて。時間だとふわふわしちゃうけど、寮がなくなる、ってなると、具体的に焦っちゃいそうじゃない、わからないけど」
「フウン」
「ヨリコさん、紅茶の用意ができましたよ」
「おっと、ごめんなさいトキワ監督生さん。さあさ、最初のお仕事ですよ。指示出し、指示出し」
「ヨリコさん、からかうのはよしてください。監督生って言わなくても働きますから」
「あはは、頑張って、トキワ監督生」
「イノリまで……もう」
「先輩、私たちも手伝いますよ」
「おお、副監督生」
「じゃあ、コトブキさんはテーブル拭いて。アサギリさんは、キッチンでお菓子を用意してるハナさんを連れてきて」
「はあい」「はい」
「ワンコさんは、坂道で監視」
「監視?」
「入寮生が見えたら教えて」
「ああー、はい。了解」
「お菓子できました」
「ありがとう。さて、入寮生のカップはどうしましょうかねっと……」
「もう入寮生が坂登り始めてるー」
「げっ、早いなあ」
「時間を守る良い子たちってことでしょう」
「さあ、みんな並んで並んで。ほら、姿が見えたらせーの、だよ」
「本当にやるの?」
「やるよーやるともさ」
「わードキドキする」
「ほらもう来るよー」
「しーっ」
「恥ずかしいなあ」

「……せーの」「ようこそ、坂ノ上女子寮へ!」
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